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現在進行形の名もなきドラマは星の数ほどに

 

 

 

確か以前、我が湾岸クライシスの記事の中で触れたことがあるように記憶している。我が家のお隣に住まれている老夫婦のお話である。

実は、このお爺さんが年期の入った大のベイスターズファンであるという、言うなれば「津田沼の奇跡」。

 

御歳、既に80歳を超えているとのことであるが、家の周囲の掃除だの、お風呂掃除だの、矍鑠とこなされている様子などは、何とも若々しく見えるのである。

そんなお爺さんから、このゴールデンウィークのとある日中、愛犬のお散歩に出ようと準備をしていると、品の良い笑顔を浮かべながら「こっちこっち」と手招きをされた。

 

この休み中に、地方に住まれている息子さん一家が里帰りで戻られていたし、おそらくはお土産のお裾分けか…と、若干恐縮の程で歩み寄ったところ、意外にも渡されたのは冒頭に掲載した2冊の雑誌。

 

歓喜の98年、セカンド・インパクトの模様を伝える特集号。きっと大事に仕舞われていたのだろう。20年も前の雑誌にも関わらず、ヤケだのシミだの折り目だのは一切見当たらず、ビックリするほど綺麗な状態。

「もうこの歳だし、いつ何があるか分からないから」

柔和な笑顔とは反比例するような、そんな言葉と共に手渡された、まさに魂の架け橋。

 

虫の知らせというヤツなのか。もしかしたら病気でもなさっているのか…こんなことがあったすぐ後に…なんていうのはナシだよね。

そんなことを思いつつ、このゴールデンウィークは、手渡された雑誌を感慨深く捲る日々。

 

ふむ、そうか。
そうだよね。

沖縄の同志にして人生の大先輩でもある、しんぱちさんから頂いた月刊ベイスターズしかり、大事に保管しますというのは少し寂しい対応ではないか。

 

引き継いでいくのだよ。
発信をするのだよ。

それも大事な使命ではないか。

 

…と、いうことで

 

この度は『サンケイスポーツ特別版 週刊ギャロップ 緊急速報 横浜日本一』に掲載された、感動のドラマを皆様にご紹介させて頂こうではないか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ハマのシンボルは見守ってくれた

『強運・氷川丸』

〜再び運んでくれた涙のドラマ

人生を変えた大漁旗

ドラを打つ手が震えていた。池杉愛子さん(58)だ。横浜の、いや、大洋時代からの名物応援団長として「もう一度、あの感激を味わいたい」と夢見ながら、平成7年に「肝不全」で亡くなった夫・昭次郎さん(享年64歳)の《代役》を見事に果たした瞬間だ。

「お父さん、日本一になりましたよ。これで、このドラを返せますね。」

最初、昭次郎さんは巨人ファンだった。その昭次郎さんが大洋ファンに変身したのはひょんなことから。川崎球場で観戦した「大洋-巨人戦」で、あまりにも弱い大洋を必死で応援する社員の姿に感激したのだ。

「私にもその大漁旗を振らせて下さい」

すると応援していた社員からこんな言葉が返ってきた。

「この旗をあげる。だから応援団を作ってくれないか」

昭和30年、昭次郎さんが24歳のときだ。
横浜市電の運転手と応援団長…。そんな昭次郎さんが《名物》になったのは昭和35年のこと。打ち振る大漁旗がいつの間にかドラに変わった。現在、山下公園近くに繁留されている「氷川丸」が使っていたものだ。

氷川丸は昭和5年に日本で建造された1万2000トンの貨物船。日本と米国、カナダを往復、そして幾多の戦禍を免れた《強運の船》。その「氷川丸」の2つあるドラの1つを球団が譲り受け、昭次郎さんの手に渡ってきたのだ。

 

三原監督とV行進

ご利益は早速、その年に訪れた。それまで6年連続最下位だった大洋が《奇跡》の初優勝。しかも、昭次郎さんは優勝パレードで三原監督から「お前も乗れ!」と、ファン代表ときてオープンカーに乗せてもらった。

「『あの感動をもう一度味わいたい』があの人の口グセでした。一心腐乱に応援する姿を見たら、夢を叶えさせて上げたいという一心でしたね。」

しかし、優勝どころかBクラスに甘んじる低迷期。そんなとき、昭次郎さんに悲劇が訪れた。
昭和50年1月27日、神奈川・桐蔭学園の3年生で、大学進学が決まっていた自慢の長男・泰昭君が自動車事故で亡くなったのだ。プロ野球を目指し、有望視されていただけに、そのショックは計り知れなかった。

免許証の中に泰昭君の写真を入れ、何かに憑かれたように応援する昭次郎さん。負ければヤケ酒を浴びる毎日。そんな夫を愛子さんは支えた。喫茶店や病院で働き、お金を持たせては球場へ…。

ところが平成7年8月12日、昭次郎さんは「肝不全」で夢半ばにして帰らぬ人となった。応援団も自然消滅した。

以来、愛子さんは夫が座っていた席を年間指定席で買い、1人で声援を送り続けてきた。そして日本シリーズでは夫が使っていたドラを3年ぶりに球場へ持ち込んだ。

「天国のお父さんがドラの音を聞いて、応援してくれたのでしょう。私もお父さんももう思い残すことはありません」

日本一で湧くスタンドでそっと目頭を抑えた愛子さん。10月28日には感謝を込めてドラを氷川丸に返す。

 

 

 

38年という、長過ぎる歳月が生み出した、悲しくも美しい良質のドラマ。如何であっただろうか。

 

あの歓喜の98年から既に20年。

こんなドラマは、この国のとこかで…いや、自分のすぐ身近なところでも、現在進行形で繰り広げられているに違いない。

 

もう一度見て欲しいよね。

味わって頂きたいよね。

 

 

 

あの優勝の瞬間を。

 

 

 

 

 

 

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ぬまつだちゃん:

View Comments (10)

  • 主筆様今晩は。そしてありがとう。
     数あるベイファンが投稿するブログの中で、これほど感動して涙が止まらないブログが他にはありません。
     大洋ホエールズが日本一になったのは池杉正二郎氏が29歳、私が小学4年生のときでした。私も古参の大洋ホエールズファンと自負していたのですが、主筆様ご近所にお住まいの老夫婦(矍鑠・かくしゃくの読み、意味、言葉の由来も勉強になりました)、そして池杉夫妻といい上には上がいるものですね。敬服いたしました。
     先月、19日義弟と一緒に大洋ー巨人戦を観戦し、翌日たまたま横浜港をぶらりと観光し繁留されているを「氷川丸」を見ました。あの船にこんなにも美しく素晴らしいドラマが隠されていたなんて。湾クラ同志に掲載、発信してくれたことに感謝感激です。
     主筆がおっしゃる通り私の中にもドラマは50余年も現在進行形でずっと継続して続いています。やがて訪れるであろう痴ほう症がやって来る前にあの瞬間をもう一度味わいたいですね。

    • しんぱちさん

      コメントありがとうございます。
      どーも!今晩は!

      >大洋ホエールズが日本一に

      小学校4年生の時ですか…自分が子供の頃のことを考えても情報量が現在の比にならないほど少なかったですからね。それが1960年の、更に沖縄の地となれば尚更です。いろいろ御苦労をされたと察します。

      >氷川丸

      山下公園でしょうかね。確か昔はデッキに上がれたように記憶してるんですか…もう何十年も行っていないので間違っていたら申し訳ないです。

      >私の中にもドラマ

      歓喜の98年のパレードでは優勝を心待ちにしながら亡くなられた方の遺影を持った方もおられたとか。それぞれのご家族にもドラマが進行しておりますね。こうしてひとつの勝ち負けに一喜一憂していられることに感謝です。

  • コンチワ!

    託されましたか!魂の継承を!

    「闘魂は連鎖する!」
    あの1998年のもう一つのビッグドラマ、アントニオ猪木引退試合にて古舘伊知郎が放った言葉!(ちなみに猪木は横浜生まれ)
    闘魂は燃え尽きても、我々一人一人が闘魂の小さな火種を携えてこれからは歩んで行こう!と叫んでいました。

    横浜の、大洋の魂も同じ様に様々な人が各々小さな火種を携えて横浜の魂を連鎖していくことでしょう!
    とは言えまだまだご健在なそう言った方々に1人でも多く優勝を見させてあげたい!
    願わくばもうこの1.2年で決めてもらいたいものです…。

    • くじらさん

      コメントありがとうございます。
      どーも!コンチワ!

      >闘魂は連鎖する

      このチームを愛し続けた者にしか分からない、心の葛藤や気持ちの持ちよう、そして数々のトラウマとか。若い方々に引き継いでいかなくては…いや、引き継がない方が良いことの方がたくさんありますな(笑)

      >1人でも多く優勝を

      前回の優勝時に「38年とか、どんだけー」と思っておりましたが、あっという間にあれから20年経ってますからね。気付いたらまたまた38年とか…有り得ない話ではないような。

  • おはようございます。

    >現在進行形の名もなきドラマは星の数ほどに

    広島初戦は雨で中止 

    強まる雨でノックができない中でも
    濱口は黙々と外野でキャッチボールを繰り返したらしいですね。

    開幕投手候補から一転、故障で2軍スタート。
    その間に京山が飯塚がバリオスが奮闘する。

    復活したはずの今永もウィーランドも再調整でふたたび横須賀へ

    ポジションは自分で守れ これが今年のベイスターズ
    結果を出さないと、ローテーで来週投げさせてもらえる保証は無い

    マツダスタジアム
    昨年のCSでは先発 そして救援と大活躍をした背番号26

    首位広島との初戦に出遅れた自分を起用してくれたチームにも恩返しをしたい

    ルーキー東投手は
    「ライバルは濱口さん」と言う
    同じ左腕 同じくまっこう勝負の先輩を尊敬しての言葉だろう。

    負けるわけにはいかない 広島にも 東投手にも

    『VICTORY is within US.』

    • ぱとりおっと・ぱしりん3さん

      コメントありがとうございます。
      どーも!おはようございます!

      >広島初戦は雨で中止

      濱口は投げたかったでしょうね。東や京山の台頭で危機感もあったでしょうし。それに女房役の高城も同じ心境だったと思います。ここにもひとつのドラマが眠っておりますな。

      >結果を出さないと

      今までであれば今永もウィーランドも無理してローテに残してるはず。チャンスを求めて目をギラつかせている選手がたくさんおりますから。こんなチームが弱いはずがありません。次は飯塚あたりにチャンスが行くことになりますかな。

  • おはようございます。

    >あの優勝の瞬間を。

    30試合が終わり
    首位とのゲーム差は4 このまま行くわけには行かない

    バナナボーイ東投手の時は打線が沈黙。
    4番の打席には辛辣なヤジが飛んだ

    中5日で毎回ランナーを背負いながらも「状態は悪くない」と頑張る東
    体を張ってホームに突入した柴田

    今日も中継ぎ抑えが完璧な仕事をしている。
    井納投手の頑張りがすばらしい。

    不安定な打撃陣が一日も早く復調する日を
    このまま広島を独走させるわけには行かない。

    金曜日からは気温もあがりホーム横浜スタジアム
    たくさんの勝利の女神たちがハマスタへ集まる

    ベイスターズ伝統の
    はでな空中戦を魅せて欲しい

    『VICTORY is within US.』

    • ぱとりおっと・ぱしりん3さん

      コメントありがとうございます。
      どーも!おはようございます!

      >首位とのゲーム差は4

      これだけ先発陣を大事に使ってますからね。必ず真価は毎週のように6連戦が続く6月から夏場にかけて出て来ると思います。首位カープを捉えるのはそのあたりではないでしょうか。

      >辛辣なヤジが

      カープの投手陣は大胆に攻めてましたね。グイグイと速球で押し込み、インコースにもしっかりと投げ込んで来てます。解説の北別府が「秋に効いてくる」と言っていたのが印象的でした。ウチもそんなことを言われるチームになったんだなという意味ですが(笑)

      >勝利の女神達がハマスタへ

      どうやら金曜日あたりから気温もググッと上がって来るようですね。この夏を制するのは我らがハマ☆ベイだと確信しておりますぞ。

  • おはようございます。

    >ハマのシンボルは見守ってくれた

    ハマのシンボルが待つスタジアムに
    戦士たちが帰ってきた。

    14勝14敗2分
    先発は石田 
    あらためてここからが開幕だ

    広島 阪神 ジーヤンツ まとまめ抜き去り
    オールスター前には今年のシーズンを決めてやればいい

    2戦目は濱口と言う
    10日のハマスタの練習では
    指名練習で一軍に呼ばれた今永とならび
    元気に投手陣を引っ張ったと言う

    「てるてる坊主でもつくろうかな」
    待ちきれない気持ちはファンも濱口も同じ

    投げる哲学者今永は
    「1軍で調整させてもらえるのは貴重な事 練習から迷っている姿を周囲に見せちゃいけない」とチームを後押しする。

    先輩の後押しもある

    2017年の特別新人王となった大活躍 CS・日本シリーズ そして 2018年開幕からの長期欠場 いい経験を積んだ。

    今永先輩を焦らせないためにも 2年目濱口が成長した姿をハマスタで見せつける。

    『VICTORY is within US.』

    • ぱとりおっと・ぱしりん3さん

      コメントありがとうございます。
      どーも!おはようございます!

      >ここからが開幕

      今永、濱口、ウィーランドとエース格3人を欠いた出だしですから、贅沢は言えませんな。そのおかげで京山が台頭したことが最大の収穫です。

      >2戦目は濱口

      濱口の初登板は勿論、マスクを被る高城も並々ならぬ決意があるはず。ファーム暮らしにベンチを温める状況が続いてましたから、是非とも結果を出して欲しいと思います。

      >投げる哲学者今永

      頭が良いだけに余計な迷いがあるんでしょうかね。もっとシンプルに自分のボールを投げ込むという意識でいれば、結果は付いてくると思うんですが。