3月29日(金)横浜スタジアム
横浜 4対3 広島
1981年4月22日。北九州市営小倉野球場における大洋戦において、巨人のルーキー原辰徳は、遠藤一彦から自身初のサヨナラ本塁打を放った。この試合では原のホームインとともに、喜びを共有したい大量の取材陣とファンがグラウンド内に乱入し、北九州市営球場開設以来史上初のお祭り騒ぎとなった。
誰もが昨日のことのように思い出す
苦い記憶なのである
遠藤にとって見れば
ルーキー原は東海大学の後輩
その後輩に
サヨナラ弾を喰らい
王、長嶋の後を担う
スーパースターを世に誕生させた
伝説の一打
伝説の場面
それ以降、
3年連続最多勝など
弱小大洋における唯一のプライド
絶対神として君臨した遠藤は
ここ一番という場面で
尽く、原に
打たれ続けるのである…
昨年、16勝3敗
防御率1.98と無双した東を攻略
前半で3点を先行しながら
打たれてしまった
球界における
新たなスターの誕生
その記念すべき夜
記念すべき打席
打たれてはいけない筈の男に
打たれてはいけないスリーラン
苦い記憶が
ビールの苦味とともに
鮮烈に脳裏に蘇り
この身体を蝕むのである
て、
ん？
あれ？
打たれた！？
いや、打ったんだよな
スターが誕生したんだよな
どんな被害妄想やねん！
こん、バカちんが！
いやいや
ちょっ待てよ
所詮、ウチは
噛ませ犬の脇役チーム
そんなに上手くいくはずがない
きっと何かの間違い…
じゃ、ないの？
現実なの？
腑が煮えくりかえったり
枕を涙で濡らしたり
しなくていいの？
必要ないの？
ふむ…
まあ、皆さんが
そこまで言われるのなら
少しだけ信じようか
そういうことにしておこうか
いやいや
ちょっ待てよ
寝て、目が覚めたら
夢だったとか
そんなことないよな
いや、あるかも知れんな
寝たらアカンな
現実に引き戻されるな
いやでも
眠いぞ、耐えられんぞ
もう1回だけハイライト見て
確認しておくか
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