その昔、
千葉公園体育館という
ローカルな小屋に
年に何度かプロレスの興行がやって来た
興行の到来を告げるのは
電柱に貼られた
人相の悪い顔写真の並ぶポスターに
音の割れたスピーカーで
大物外国人の参戦を煽る街宣車
パチンコ屋の新装開店に出現した
チンドン屋とともに
今ではすっかり絶滅してしまった
懐かしき昭和の幻影よ
まあ、別に
詩的なことを書きたい訳でも
遠い想い出にすがりつきたい訳でもない
お話したいのは
その体育館で見かけた
ひ弱な、ある新人レスラーのこと
先輩のレスラーにボコボコにされ
観客席からは失笑が漏れていた
子供心に
可愛そう…と、言うよりは
無様というか
見ている方がいたたまれない
そんな光景だったように覚えている
そして、1年が過ぎ
またオラが街にプロレスがやって来た
その頃にはいっぱしに
親から借りたカメラなどを持ち
大人びた気分で意気揚々と乗り込んだ
小さく薄暗い体育館
パンチパーマの怖そうなお兄さんから
パンフレットを購入し
最初のページに
安っぽいスタンプで押されている
その日の対戦カードを
ワクワクしながら覗き込む
すぐ隣では
誰もが知ってる
あの巨体のスーパースターが
Tシャツだのタオルだの
購入したファンにサインをしている
残念ながら…
グッズを買えるようなお金は
ポケットに入っていない
帰りの電車賃にジュースくらい
それが精一杯のお小遣い
ただただ、その光景を
羨望の眼差しで見つめることが
その時にできた
唯一の行動だったんだろう
さて、そして
この日も前座の第1試合に登場した
あの、ひ弱な若手選手
も…
思わず、ほぉ…と
小さな声が漏れてしまった
1年前とは比べ物にならないくらい
厚くなった胸板
ひと回り
いや、ふた回りは
大きくなった立派な身体つき
相手に張られれば
しっかりと足を踏ん張って張り返し
見せ場となれば
綺麗なドロップキックなども
繰り出していた
試合は10分程度で負けてしまったが
最後に待っていたのは
よく頑張ったという
お客さん達の大きな拍手
そして生意気にも
悔しそうな顔を見せる若者からは
一人前のレスラーの雰囲気が
少しだけ漂い始めていた
…
えーと…
何の話がしたかったんだっけ?
そう、
男子3日合わざれば何とやら
今年、あの時と同じ感覚を感じたのが
急成長を遂げた平良の投球
140kmそこそこだった球速が
150kmに迫るまでに威力が増し
自分が観戦した
ハマスタのゲームでは
不沈艦・沢村賞男の菅野相手に
堂々と投げ勝ってしまった
凄いよね
若者の成長って
秋から冬が来て
また、春がやって来る
こんな想いに浸れるのも
この世界を愛した特権なんだよな
そう言えば
あの新人レスラー
川田とか何とか言ったっけかな
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