無機質な空間
物言わぬ羊
横たわる我が身を嘲笑うように
生温かい風が吹き抜ける
奴が来た
青白い顔で奴が来た
7月20日
喉の奥に強烈な違和感を感じ
夜中にふと目が覚める
どこかで「パチンッ」
と、指を鳴らす音が聞こえたその刹那
全身を襲う倦怠感
焼け付くような焦燥感
奴が来た
青白い顔で奴が来た
7月21日
全てを悟り朝から
指定の発熱外来へ連絡を入れる
1件目、2件目、
10件目、11件目…
手に持つスマホの熱が
不快に感じ始め、全てを投げ出す
体温38.8度
7月22日
喉が痛い
頭が痛い
2錠が4錠、4錠が6錠
鎮痛剤は遂に10錠を数えている
中島らも氏は語っていた
子供用咳止めシロップを3本飲めば
目がトロ〜ンとして
簡単にラ◯ることが出来るのだと
正攻法は諦め
近くの町医者で抗体検査
待ちくたびれたように
奴は、笑った
体温39度
ベイは負けた
7月23日
ここに来て
漸く気付く
自分が喉だと思っていたのは
果たして本当に喉なのか
喉として認識している部位より
遥かに上部、寧ろ上顎より
ネットで調べると
そこは、扁桃腺というらしい
体温38.8度
ベイは負けた
24日
体温37.6度
気分爽快
またベイは負けた
奴の姿がない
7月25日
体温36.5度
これを世間は平熱と呼ぶのだろう
お祝いは躊躇ったら負け
冷えたプレモルと大人のキスを楽し…
楽しもう…
て、これ不良品だろ
味がせんわ
7月26日
溜まった仕事を少しずつ始める
熱を測ることすら面倒
鎮痛剤を飲んで
奴の顔でも拝みに行くか
歯車はこめかみのあたりで
大きな音を立てて回っている
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