時は、3月12日
早朝4時
誰かに起こされることもなく
目覚ましが鳴る訳でもなく
パチリと目が覚める
人体の神秘
コーヒーの仄かな香りが
五感を呼び醒まし
いつものように
ニューヨークタイムズのコラムと
昨日の株価のチャートを
一通りチェックする
間もなく
世間は目覚めの時を迎え
慌ただしい
金曜の朝が幕を開ける
新型コロナの影響もあり
交通量は減っているとは言え
不慮の事故だの
工事規制だの
どこでどんな
渋滞に巻き込ませるか分からない
早目に都心を抜けておくに
越した事はないだろう
昨晩のうちに用意した
荷物を後部座席に投げ込むと
マイ・マシンのキーに
手をかける
オッケー
ご機嫌は良いようだ
いつも通りの
低く澄んだエキゾーストノート
予想通り
まだまだ交通量の少ない湾岸高速を
じゃじゃ馬を慣らしつつ
西へ西へとひた走る
おっと、
BGMを忘れていたようだ
こんな朝にぴったりの
あのナンバーを
とばすぜBaby 今夜はLady
いかすRock'n Roll 聞きながら
可愛いいお前をのせて〜🎵
とばせLow
スピンをきめて
とばせSecond
レッドにぶっこめ
とばせThird
まだまだふめるぜ
とばせTop
メーターふりきれ
今夜もバリバリ
かっとびRock'n Roll〜🎵
途中、
いつものように
東名の入口や厚木のあたりで
若干の渋滞には捕まったものの
9時を回る頃には
静岡に到着
少し早く着き過ぎたか
時間を潰すため
9時半から営業していると言う
静岡海鮮市場に立ち寄り
新鮮な海の幸を物色
どうやら食堂の方は
殆どの店舗が10時半開店とのことで
現地でお昼に食べようと
テイクアウトの海鮮丼をチョイス
いろいろ種類がある中で
伊豆近海の聖なる恵み
マグロ白魚桜エビの三食丼に
カワハギの刺身を追加する名采配
勿論、宝石のような
肝が添えられていたのは言うまでもない
さあ、
向かおうか
想い出の地にして
大洋史に燦然と輝く
伝説の球場
草薙へ
ホエールズ時代のキャンプ地であり
プリンス・山下大輔の出身地
もう何年…
いや何十年前になるか
初めてこの聖地を訪れた時の
あの感動は今でも鮮明に覚えている
車窓からチラリと目に入った
草薙球場の外観は
少しばかり
近代化の衣を纏い
暫く会うことのなかった
昔の恋人のようなよそよそしさで
自分を迎えてくれたようだ
高まる鼓動に
はやる気持ちを抑えつつ
球場の裏手にある
駐車場へと車を進める
えーと、料金は…
ん？
え？
バツ！？
駐車場の入口に佇む
警備員さんらしき男性が
腕をクロスし
バッテンマーク
おお、そうか
これはミステイク
やや早く着き過ぎたと
呑気に昼食を物色していたのが悪かった
どうやら早々に
満車になってしまったようだ
まあ、それでも
臨時の駐車場くらいあるだろう
最悪の場合
コインパーキングでも文句は言うまい
車の窓を半分ほど開き
紳士的な態度で尋ねてみる
失敬、他に駐車場は…
「中止ですよ」
ん？
へ！？
ヒュ〜
よく聞こえなかったが
俺の耳が悪いだけかも知れないから
もっと大きく
窓を開こう
時を戻そう
へい、ミスター
教えてくれ
この近くに他に駐車場は…
「中止になりましたよ。今日の試合」
((((；ﾟДﾟ)))))))
いやいやいや
冗談はミッキー吉野
確かに厚い雲には覆われているが
まだ雨は降っていない
マイ・マシンのフロントガラスにも
雨粒のひとつも落ちていない
ちょっと待ってくれ
もう一度だけ時を戻そ…
「お客さん、後ろ車がつかえてるから！」
あ、は、ハイ
ス…すんましぇん… (涙目)
嗚呼…神よ
これは何かの間違いに違いない
頼むから
間違いだと言ってくれ
津田沼を5時に出て
片道約250キロの道程
今日という日は
この日の為に取得した年休は
一体、なんだったのか
何の為だったのか
草薙球場ならと
奮発して
生まれて初めて購入した
ハマスタで言う所の
エキサイティングシート！！
生まれて
初めて購入した…
エキサイティングシート
嗚呼…
神よ
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